プロジェクトストーリー
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01.地域再生を導く、小野瀬自動車の挑戦
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小野瀬 征也
ONOSE YUKIYA
代表取締役社長
Project Outline
小野瀬自動車が歩んだ経営再建の軌跡は、試練と挑戦、そして希望の物語。競売や不正の発覚という困難を乗り越えた背景には、経営者としての覚悟と組織を変革する力がありました。社員数を4倍、売上を6倍にしたV字回復の裏側には、どのような決断と行動があったのか。さらに、地方企業を活性化する「再建の連鎖」を目指す次なる挑戦とは?小野瀬自動車の過去・現在・未来を通じて、地方から広がる希望のストーリーをご覧ください。
借金、そして廃業という試練の始まり。
私は2016年、家業である小野瀬自動車の経営に携わることになりました。それは、順風満帆なスタートではなく、まさに崖っぷちの船出でした。私の父が築き上げたこの会社は、かつて年商100億円、従業員120人を抱える地域の名門企業でした。しかし、バブル崩壊を機に業績が急激に悪化し、次々とディーラー権や店舗を手放し、最終的には整備工場一つを残すのみとなりました。
さらに事態は深刻化し、私が社会人2年目の24歳の時、家業の土地と建物、実家までもが競売にかけられるという危機に直面しました。突然の知らせに動揺しましたが、「会社員としての信用を使えば競売を回避できる」と父に説得され、不安を感じながらも借り入れにサイン。家業は一度廃業しますが、新会社の「小野瀬自動車」として再出発しました。この経験を通じて、私は家業を背負うという決断を迫られ、自分の立場や責任を自覚するようになったのです。
この頃、私は証券会社を経てリクルートで働いており、営業力を磨いていました。しかし、家業を守るためには、営業だけではなく「組織」と「人」に向き合う必要があると感じました。家業の現状を冷静に見つめ直し、「自分に何ができるのか」を模索し始めたのが、このタイミングです。
社員の不正から学んだ透明性の改革で組織を再生。
経営に戻った後、私が真っ先に着手したのは「信頼の回復」と「透明性の向上」でした。Uターン当時の従業員は7人で、年商も1億円ほどにまで落ち込んでいました。朝の出社後に掃除する習慣はなく、壁紙もなくて社屋はボロボロでした。接客でも、名乗りもせずに電話を受け、来店客へのあいさつもなく、整備士の作業服はヨレヨレで汚れがついたまま。私は、同時に入社した社員と一緒に掃除から始め、天井のクモの巣を払い、色あせたのぼりなども交換しました。車の清掃の徹底、朝の掃除、敷地内のごみ拾い、展示車の陳列、のぼりの立て方に気を配り、中古車情報誌への掲載でPRや来店客への販売提案など、休みなく動くこと約8カ月。ようやく、前年15年の年商1億円という数字から、16年は倍の2億円を超えることができました。
そんな順風満帆に見えた経営でしたが、営業社員による下取り車両の横流しの不正が発覚しました。このとき、私は初めて「任せる」と「見ない」の違いを痛感しました。不正を許す環境を作ってしまったのは、自分の経営責任にほかなりません。そのため、業務フロー、在庫管理、会計システムなど、全てを見直し、再発防止に努めました。
また、全社員が会社の現状を共有できるように、事業報告会を定期的に開催しました。これにより、社員一人ひとりが「自分ごと」として会社経営に関わる体制を整えました。商品戦略では、車の価格帯を40万円から100万円以上に引き上げ、顧客層を従来の高齢者から30代ファミリー層にシフトしました。この変化により、粗利益率が大幅に向上し、会社の経営基盤が強化されました。
この過程で私が学んだのは、「攻めるだけでなく守る経営の重要性」です。売上を追求するのではなく、付加価値を高める方向に舵を切り、社員とともに歩む文化を築くことで、会社全体の士気を高めました。この改革が、会社再建の大きな一歩となったのです。
地方から広がる再建の連鎖になりたい。
経営改革の成果が出始めると、私の中には新たな目標が芽生えました。それは、「地方から再建の連鎖を広げる」という使命感です。社員数を4倍、売上を6倍にしたこの成功体験を、同じように苦境に立たされている地方企業に届けたいという思いが強くなりました。
私たちの再建ストーリーを発信することで、地方の企業が「やればできる」という希望を持てるようになればと思っています。実際に視察に訪れる企業も増え、地方同士が連携して活性化していく流れが生まれつつあります。この連鎖の中で、小野瀬自動車を地方企業の「成功モデル」にしていきたいと考えています。
さらに、私は「経営者と子育ては似ている」と感じています。社員の成長を促し、可能性を信じ、価値を最大化する経営は、子どもの未来を育む親の姿勢と重なる部分が多いのです。これからは教育分野にも目を向け、経営を通じて地域の次世代に影響を与えていく、そんな存在になれたらいいなと思っています。再建の連鎖を通じて、地方を活性化させる新しい未来を描く。それが私の次なる挑戦です。